Vol. 1 『トラス・バンパー上部作業及び昇降時における安全』
Vol. 2 『テレビ、スタジオ内でのアルミトラスゲートの転倒防止について』
Vol. 3 『チェーンホイスト等における感電事故防止のための基本マニュアル』
Vol. 4 『野外での強風による災害を防ぐためのガイドライン』
Vol. 5 『ステージ、タワー、足場等からの墜落事故防止のための安全対策』
Vol. 6 『吊り物の落下防止のための安全対策』
Vol. 7 『照明機材のレンズ集光熱による事故の懸念』

仮設ステージ安全基準
施工編
維持管理編 設計編



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全国イベント会場安全推進マップ



ガ イ ド ラ イ ン Vol. 1

『トラス・バンパー上部作業及び昇降時における安全』

平成13年9月20日

 コンサートなどの施工、撤去現場の高所作業における労働災害を防止する為に、ガイドラインを作成しましたのでお知らせ致します。( このガイドラインは厚生労働省東京労働局安全課のご指導の基で作成しました。 )
 基本的には、自社のスタッフの安全を確保する為に、安全設備及び安全装備品は、各社で用意し使用を義務付けるなどの、対策を講じて下さるようにお願い致します。( 各社とは、主催者側から直接受注した企業を言います )
 また、全部の安全設備を揃える事は経費も大きくなりますがレンタル品もありますので、ご用意戴きますようお願いします。
 現場に各社がそれぞれ持ち込む安全設備類や設置する場所等については、総合打合せ会議などの機会を利用し、主催者側も交えて調整することをお勧めします。
 尚、安全装備品( ヘルメット・ハーネス・安全ベルトなど )は個人の体型や衛生の観点から、個々に提供するなどを講じ、着用と使用の指導・教育を行い装着を義務付ける等の対策を講ずるようにお願い致します。
 今回のガイドラインで示す、安全装備品や安全設備品は、セットとしてお考えください。

1.ヘルメット

No.1  飛来・落下・墜落などで頭部を損傷する恐れがある場所での作業を行なう場合はヘルメットを着用する義務と権利があります。
No.2  使用するヘルメットの種類は墜落・落下・飛来・耐電用の物を使用する事。
No.3  ヘルメットの着用は、作業をするスタッフだけでなく、立ち会う営業担当者やデザイン担当者も被ることを義務づけること。

2.フルハーネス及び、安全ベルト

No.1  墜落時に落下防止の命綱が作用した時に装備品のずれを防ぐ為に、個人の体型に合わせた物を使用すること。
No.2  本体に装備されているベルト以外に、補助ロープを装着し使用する事。

3.ワイヤー梯子

No.1  設置
トラス及びバンパーの上部の主材に設置すること。玉掛け等の有資格者が設置、若しくは点検すること。
No.2 昇降時の姿勢と体重移動について
腕で身体を梯子に近づけバランスを保ち身体を支えること。登り降りの体重は、脚にかけ、脚で昇降すること。(腕だけで昇降しない)
No.3 身体の確保 ( 三点確保の原則 )
昇降の際は、両足・両手の計4点の内、3点が常に身体を支えている事。
No.4 ワイヤー梯子から、トラス若しくはバンパーへの乗り移りには安全ブロックのフックを外す前に、必ず補助ロープを親綱や本体の主材へ取り付けてから外す事。( 降りる場合も同様とする。)
No.5 ワイヤー梯子を昇降する場合、揺れを防止する適正な数の係員を必ず配置する事。
No.6 昇降中は監視員を置き、安全設備及びヘルメット・ハーネス・安全ベルト等の安全装備品の着用の確認を行い、昇降時の安全確認を行う事。 ( ワイヤー梯子からトラスへの乗り移り、トラスからワイヤー梯子への乗り移り等の目視確認と指導 )

4.安全ブロック(昇降時の垂直移動時の、墜落を防止する為の設備)

No.1 安全ブロックは、トラス及びバンパーの上部にワイヤー梯子から少し離して設置すること。 ワイヤーに近すぎると身体に当たり、昇降の妨げになる場合があります。
No.2 安全ブロックの長さ ( 10m、15m、20m、25m、30mの 5 種類あります )トラス及びバンパーの高さに適用する長さの物を設置すること。
No.3 本体のフックにロープ等を繋ぎ、巻き上げられているフックを下で引き下げる事の出来るように、施しておくこと。( 引き寄せロープ )
※ この装置の使用方法を周知させる指導をお願い致します。

5.親綱    (水平移動時の、墜落を防止する為の設備)

No.1 トラス上での移動は、本体に安全ベルト等のフックを掛けて水平移動をする事は困難な為、移動を容易にする為に、トラス上に親綱を設置し墜落の危険を回避させること。
No.2 親綱は、取り付けの専用器具を使用し、出来る限り腰部の位置の高さを保ち、かつ緊張器を用いて、弛ませず張ること。
No.3 親綱は一般的なロープを使用せず、専門のロープを使用すること。

6.手摺の設置

No.1 ワイヤー梯子からトラスなどに乗り移る際、若しくはトラスからワイヤー梯子に乗り移る際、不安定な姿勢での体重移動による墜落の危険性を排除する為に、手摺の設置を行うこと。
No.2 手摺の高さは、750mm程度とする。
No.3 手摺は、トラスの主材に取り付けること。
No.4 手摺の下部に立ち上がりのステップを設けること。

尚、幹事会で試作品を作り実験を行い、ご提案致します。

7.ショック・アブソーバー   (墜落時の衝撃吸収器具)

墜落時に身体に掛かる衝撃を和らげるために、安全ブロック及びハーネスや安全ベルト若しくは、補助ロープにショック・アブソーバーを装備する事をお勧めします。

ガ イ ド ラ イ ン Vol. 2

『テレビ、スタジオ内でのアルミトラスゲートの転倒防止について』

平成13年11月1日

 テレビ局等のスタジオ内で、美術セットのアルミ製トラスゲートの転倒等による、労働災害を防止する為に、ガイドラインを作成致しましたのでお知らせ致します。
 このトラスゲートは、高さ3m間口3m奥行450mmで本体の重量は、約100kgあり、倒れ掛かると、一人では支えきれない重量です。
 まして、倒れるトラスの下敷きに成りますと重大災害となる危険性を孕んでおりますので、取り扱いには充分な注意と作業手順を省く事の無いようにご指導下さいます様、お願いします。
 美術セットとして使用するトラスゲートは、上部に装飾物や照明機材を取り付ける場合が多く、重量バランスが悪い上に、接地面が少なく不安定で、安定を持たせるには、接地面を多くする為に鉄板製のベースを底部にボルト等で固定し、ベースが滑らない様にフロアー設置面に、ゴム材を貼り付ける。
 そのベース本体が構造計算上のウエイトの役割をする重量である事やベース重量が満たない場合は、更にウエイトを乗せバランスを取る方法又はベース、若しくはトラス本体をフロアーにアンカー止めをする等の方策を講ずる事をお勧めします。
 ベースを設置し、補助として天井から補助ワイヤーを取ると更に強固な処置方法です。
 スペースの問題等でベースを設置出来ない場合は、天井から転倒防止のワイヤーで吊る事などの方法を取って下さい。
(この作業は、建て込む前に、転倒防止の為に天井からロープ若しくは ワイヤー等で、補助しなければなりません)
※ 地震や振動による場合や何かの拍子に寄りかかる等、重量バランス が崩れ、転倒し大きな人災を引き起こす等の危険性を秘めている事を考慮され、ベース設置のスペースを是非取られる事をお願いします。
(尚、この安全ガイドラインは、東京労働局安全専門官の指導により作成しました。)

1.ヘルメット
No.1 飛来・落下・墜落などで頭部を損傷する恐れがある場所での作業を行なう場合は、ヘルメットを着用しなければなりません。
No.2 使用するヘルメットの種類は墜落・落下・飛来・耐電用の物を使用して下さい。
No.3 ヘルメットの着用は、作業をするスタッフだけでなく、立ち会う営業担当者やデザイン担当者や、飛来・落下の恐れがある周囲にいる方も、着用するようにお願いします。
No.4 周囲で立会い、若しくは作業中にヘルメット無しで怪我をした場合の責任の所在を明確にする為にも周囲の方々も着用の義務が生じます。
No.5 ヘルメットの耐用年数は、使用頻度や保管環境にも寄りますが、 およそ、3年から5年程度を目安としています。 また、紐等は汗や脂で腐食する度合いが高いため、一年程度で取り替える事をお勧めします。

2.フルハーネス及び、安全ベルト
No.1  高所作業時における、墜落防止の命綱が作用した時に装備品のずれを防ぐ為に、個人の体型に合わせた者を使用する事。
No.2  本体に装備されているベルト以外に、補助ロープを装着し使用する事。

3.アルミトラスゲートの作業手順
No.1 トラスゲートに取り付けられる装飾物及び照明器具類の総重量の把握。 (ケーブルコード類の重量も含む)
No.2 トラスゲート本体の構造計算を行い、基礎となるベースの大きさを設定し、重量バランス、ウエイトを用意する。安定性を持たせる計画を立て、発注側へ申し入れる。
No.3 ベース、ウエイト、アンカー又は補助足も立て込むスペースに余裕が無い場合は、天井の梁若しくは、バトン等を利用し、ワイヤー等で吊り下げる方式を取る。
No.4 トラスの立ち上げ方法。
第一案
1. 天井スノコより、補助ワイヤーの設置及び、トラス吊上げ用のロープの設置。
2. フロアーに横向きにした、アルミトラスゲートを組み立てる。

3. 組みあがったゲートの上部に二点若しくは、三点に吊り上げ用のロープに繋ぐ。この場合は、玉掛け作業主任資格を有する者が、玉掛けを行う。
4. アルミトラスゲートをロープで少しづつ吊り上げながら起こしていく。足元に置いた台車を徐々に内側へ移動させる。

 第二案
1. 天井スノコより、補助ワイヤーの設置及び、トラス吊上げ用のロープの設置。
2. フロアーに横向きにした、アルミトラスゲートを組み立てる。

3. 組みあがったゲートの上部に二点若しくは、三点に吊り上げ用のロープに繋ぐ。この場合は、玉掛け作業主任資格を有する者が、玉掛けを行う。
4. アルミトラスゲートをロープで少しづつ吊り上げながら起こしていく。

 第三案
1. 天井スノコより、補助ワイヤーの設置及び、トラス吊上げ用のロープの設置。
2. フロアーに横向きにした、アルミトラスゲートを組み立てる。

3. 組みあがったゲートの上部に二点若しくは、三点に吊り上げ用のロープに繋ぐ。この場合は、玉掛け作業主任資格を有する者が、玉掛けを行う。
4. アルミトラスゲートをロープで少しづつ吊り上げながら起こしていく。

5.ベース
アルミトラス100kg取付けられる装飾品・照明機器・ケーブル等の重量100kg計200kg
W3,000mmH3,000mmアルミトラス本体450mm角
ベースの寸法
トラス高さに対してベースの寸法は、3対1の割合となり3mの高さでは1m角の
ベース板で厚9mm以上、重量は約50kg、ベースの下には滑り止めのゴム等を貼り付け
摩擦係数を上げる等の処置を講じる事が望ましい。

6.
(1) ベースを固定し、安定を保ったところで上部に転倒防止用の保護ワイヤーを天井梁若しくは、スノコに固定する。
(2) ベースが1m角50kgで補助ワイヤーを必要しない場合、トラス上部に有る吊点を外す
 その場合、脚立などを使用するに当たっては、必ず転倒防止の補助要員を配置する
 又、脚立は所定の脚立を使用し開き止め金具など規定に従って使用する。(脚立の最上段に上がる事は禁止されているので遵守願います)

※ 基本的にトラスゲートを立て込む条件は、トラスの高さの三分の一のべースが必要。
 デザイン上の問題で、ベースを取付けられない場合は、吊り方式が条件。
 ベースも吊り方式も取れない場合は、基本的には建て込む事は出来ない。
注意
(1)吊り点への玉掛け作業は、玉掛け作業主任者の特別教育修了者が行う事。
(2)物は倒れる事を念頭におき、支えロープを必ず取る。この場合は、天井からの吊り。
(3)作業においては、上部に吊り物作業を行っている場合は、下に入らない。
(4)高所作業(高さ2m以上)をさせない、又はしない様に工夫する。やむを得ず、脚立での作業時は、必ず転倒防止の補助要員を配置する。
(5)作業に当っては、ヘルメット等保護具を着用し、アゴ紐をキチンと掛ける。
(6)作業手順を作成し、順序を守り手を省かない。撤去においても同様の手順をふむ。


同様の事故を二度と繰り返さぬように、デザイン側、施工側、同現場で作業を行う、同業他社の方々もご理解戴き、ご協力をお願いいたします。

ガ イ ド ラ イ ン  Vol. 3

『チェーンホイスト等における感電事故防止のための基本マニュアル』

平成14年9月10日

 電気事故の総件数は労働災害全体の1%程度にすぎないが、その死亡事故は全死亡事故の7〜10%を占め、死亡率が極めて高い。また電気による傷害はその性質上、身体組織に壊死を生ずることが多く、死亡を免れても後遺症を伴うことが多いものである。特に高所作業中において電撃を受けると、たとえ直接的な感電災害を免れたとしても、反射運動による墜落などに結びつくことが多く、極めて危険な事故である。

 医学的には感電は呼吸麻痺、または心臓麻痺に陥るため、神経構造を焼かない限り、長時間の人工呼吸と心臓マッサ−ジによって回復することが多い。

 生命に直接危険をおよぼす因子は重要器官を通じる電気量(電圧x電流x時間)が、決定的要素である。

 一般的に、電撃の危険度は電圧よりもむしろ電流の値で決まるようである。その限界は各人の体質や健康状態で異なるが、大体次のような目安がある。

1mA前後  :わずかに電撃を感じる

5mA     :相当に苦痛

10〜20mA :筋肉収縮、筋肉の支配力を失う

50mA以上 :死亡の可能性あり

 したがって、10mA以上は危険と考えるべきである。例えば100Vに触れた人体の条件が、表皮1cm2当り1kΩであったとすれば(水で濡れた場合はこの位の値になり得る)、接触面積1cm2当り100mA流れることになり、もしそれが手から足へ抜けるような通電経路であったとすれば、それは直ちに死にいたる電気量である。

 一方、人体に流れる電流も当然オ−ムの法則に従うため、危険度は電圧にも依存する。電撃傷の発生電圧は一般的に100V以上が多く、200V以上は危険、500V以上は致命的であるとされる。しかし65Vで死亡した例もある反面、3300Vの感電でも軽度の障害にとどまった例もあり、電圧のみで危険度を論じることは困難であり、むしろ人体の表皮の状態に大きく依存する。

 一般的に人体の表皮の抵抗値はかなり高く、乾燥さえしていれば1cm2当り数十kΩであるが、汗をかいたり雨などで濡れると、その抵抗値は300〜1kΩ程度に下がる。またこの表皮の下部組織は非常に低い電気抵抗値のため、触電時の人体の電気抵抗値は表皮の条件で決まる。つまり汗をかいたり雨に濡れると、乾燥時の100倍もの電流が流れる可能性があるということである。

感電事故を防ぐための最も有効な手段は、

『まず何をおいてもグラウンドをとる』(注)

ことに尽きる。

舞台制作における3大要素を、舞台・照明・音響とすると、近年、照明・音響のシステムはすべからくグラウンドを施す方向で進んでいる。これに対して、チェーンホイストのシステムのグラウンドがとられていない事例を目にすることが多い。一般論として、電気を使用する、ふたつの異なった(アイソレートされた)システムが存在するとき、両者の電気的な共通ポイント(=グラウンド)を設けない場合は、両者のシステム間に静電結合などによる電位差が必ず発生する。(これは古くから、ギタリストのマイクロフォンによる感電で、よく知られている。)このような状況下で作業をする時に、下記に示す感電事故が発生する可能性がある。

トラスとチェーンホイスト間での感電事故

照明システムにはグラウンドが施されており、これがトラスに直結されているため、トラスもグラウンドがとれている状態になる。このトラス上の作業員が、グラウンドのとれていないチェーンホイストに触れると、感電する可能性が高い。

チェーンホイストのグラウンドをとると、トラスとの電位差が消滅し、安全に作業が出来る。

(注)チェーンホイストの『グラウンドをとる(施す)』とは、チェーンホイスト、またはモーター操作盤の電源プラグに含まれているグラウンド端子(“G”と表記されていることが多い)を、ホールや電源車からのグラウンド端子と接続することを指す。したがって、モーター用電源を出す際は、必ずグラウンド端子も一緒に出すようにして、そこでグラウンドをとることが重要となる。

************************************

100V/単相仕様の、CM Lodestar Electric Chain Hoist (model L) 1台での、誘導電圧の実測の結果を示す。(上記の例でいう、トラスと、グラウンドのとれていないホイスト間の電圧である。)
 但し、この電圧は静電結合や電磁誘導によるものであり、したがって内部インピーダンスがきわめて高く、示された電圧値自身が測定器の入力インピーダンスに依存するものであり、電流を流す能力自体はは小さく、この電圧で直ちに感電するわけではないが、数多くのモーターが使用される場合は電源に対して並列接続されることになり、結果的に内部インピーダンスは下がってきて、それに反比例して電流値は大きくなるので、感電の危険性は高まるといえる。

ホイストの筐体と、グラウンドとの電位差

スイッチOff

上昇スイッチOn

下降スイッチOn

正相接続時

32 V

65 V

47 V

逆相接続時

66 V

33 V

51 V

(このことから、CM Lodestar Electric Chain Hoist の電源スイッチは、片切りスイッチであることもわかる。したがって、グラウンドがとれていない場合、ホイストが停止状態の時でも、感電事故の可能性がある。)

************************************

これ以外に、下記のような一般的な注意事項も、同時に遵守することが重要である。

※ 電源が正しく配線され、電圧が正しいことを、目と測定器の両方で確認する。

※ 通電部分が露出しないように絶縁を施し、更に付近に導電性のものを置かない。

※ 通電の際は、その通電先の担当者に必ず声をかけ、許可を得てから行う。

※ 通電中のグラウンドの抜き差しは絶対に行わない。


ガ イ ド ラ イ ン Vol. 4

『野外での強風による災害を防ぐためのガイドライン』

平成18年4月14日

 野外におけるコンサート・イベントにおきまして、降雨への対策については、機材やシステムを雨による損傷から守るという意味で各業種が独自の方法で対応しており、合理的な形で確立してきているように思えます。それに対して、強風への対応につきましてはいまだに方法が確立しておらず、いったん災害が起きると極めて大きな損害と、場合によっては重大な人身事故にも直結する危険性を孕んでいるにもかかわらず、“とりあえずは現場処理”という、いささか心もとない状態が依然として多く見受けられています。

NPO法人 日本舞台技術安全協会では、野外での強風による災害を防ぐための基盤としての考え方と仕組みを確立すべく、今回ガイドラインを作成しました。本ガイドラインは、次のふたつの側面から提議しております。

 コンサート・イベント等の運営組織の中に、『風雨防災対策委員会』を設置し、風雨(主に強風)による災害の防止を検討できる仕組みを作る。

   雨(主に強風)に対処するための行動に関するガイドラインを示す。(労働安全衛生法に準拠)

以下、各項目についての提議を行います。発注者各位(主催者、制作会社、イベンター、プロモーター等)におかれましては、事業を行う場所においてその請負人の労働者の労働災害を防止する措置を講じることが義務付けられております(労働安全衛生法 第31条)こともご理解いただいた上で、また会員各位におかれましては、具体的な防災の方法論も併せて十分にご検討いただいた上で、野外の大規模コンサート・イベント会場において強風などによる災害のリスクを限りなく小さなものとするべく、ここにご高配をお願いするものです。

(1)防災への仕組み作り

コンサート・イベント等では、一般的に開催要項の中に運営組織が盛り込まれており、その中には統括本部、運営本部、制作本部などを各頂点として、主催者、会場、警備、各制作部門等がそれらの構成員となっている形のものが多い。そのうちで防災にかかわるものとしては、会場警備・整理、救護、周辺環境対策等が定められてはいるものの、暴風雨時等への対応は、事実上、関連する現場スタッフにその判断が委ねられている状態で、合理的、かつ迅速な判断を行うための仕組みが整っているとは言い難い。
 そこで今回、当協会は、「仕込み〜本番〜撤去」の一連の運営組織の中に、『風雨防災対策委員会』を設置することを提案したい。必要な構成員はおおむね下記の通りである。

  主催者
  制作責任者
  舞台監督
  舞台、照明、音響、映像、その他各部門の設営・設置責任者
※ 必要に応じて、会場施設担当者、一級建築士等の有資格者のアドバイスを受ける。

この『風雨防災対策委員会』は、コンサート・イベントの設営開始に先立って組織され、設営開始段階から撤去終了時までの当該期間内にその現場に設置され、必要に応じていつでも迅速に招集できる体制が確保されている必要がある。そして当該期間内に暴風雨等が予想される場合、そのレベルに応じて具体的にどのように対応していくかを事前に協議しておくと共に、それに関連したスタッフや機材の動き、制作スケジュールの変更、本番への影響の度合い、更にはこれらが経費に及ぼす影響等も含めて合意し、全体が共通の認識のもとで作業ができるようにコントロールすることを主眼とする。そして現場においては、状況の変化に応じてきめ細かく対応し、それぞれの時点での最良の対策を更新していくことが求められることは、言うまでもない。

《総則》

(目的)

 野外コンサート・イベントにおいて風雨による災害を防止するために、災害対策基準を定め、責任体制を明確にし、防災に関する活動をサポートするなど、風雨による災害防止に関する総合的かつ計画的な対策を推進することにより、催事の確立、ならびに関係者・労働者の安全と防災の確保を目的とする。

(名称)

 風雨防災対策委員会とする。

(事前計画)

 野外コンサート・イベントの設営開始に先立って組織され、当該期間内での風雨に対する防災対策を具体的に協議し、すべての構成員が共通の認識の下で行動できるようにする。

(組織、および役割分担)

 『風雨防災対策委員会』の組織図と役割分担の一例を、下図に示す。




(2)強風に対処するための作業上のガイドライン
1.  基礎構造物の強度計算は、概ね風速30m/sに耐えられるものとする。
2.  風速計を所定の場所(構造物の中で最も高く、障害物のない場所)に設置し『風雨防災対策委員会』がこれを管理する。
3. 災害対策基準
    10分間の平均風速が10m/s超(労働安全衛生法上の「強風」)を基準とする。(強風下での作業禁止)
    判断・対策のレベルを2段階に分け、具体的な安全措置を施す。

        第1段階=風速が10m/sを超えた時点

@パネル、幕類、装飾物等のチェックと補強
@重量吊り物(屋根、トラス、照明機材、スピーカー、映像機器等)のチェックと補強

        第2段階=風速が継続的に10m/sを超えると予想される場合

@パネル、幕類、装飾物等の撤去
@重量吊り物(屋根、トラス、照明機材、スピーカー、映像機器等)を着地・固定、または必要に応じて撤去する
@高く積み上げた機材(スピーカー等)をおろす
@設備倒壊を回避するための対策(ワイヤー張り、ウェイト増設等)を施す
@その他、『風雨防災対策委員会』で協議を行い、必要な処置を施す


ガ イ ド ラ イ ン Vol. 5

『ステージ、タワー、足場等からの墜落事故防止のための安全対策』

平成18年4月1日

 屋内、屋外を問わず、コンサートやイベント等において足場材やステージ材料を用いて、作業台や舞台装置、タワー等が組み立てられ、使用されることがありますが、こうした場合に使用される作業用足場やステージについては、作業スケジュールや舞台意匠等とのからみもあり、完璧な防護措置を施すことが困難であることが多く、従来からその安全性が懸念されておりました。

平成17年末に墜落死亡事故が発生しました。この事故は高さ12.3mの高所作業台上で作業中の作業員が、作業床の端部より墜落したものです。この作業床の周囲には手すりや囲いはなく、また足場は全面敷でなく開口部が多い構造であり、更に作業員は安全帯を着用していたものの、掛けやすい箇所がなく、使用していなかったために起きてしまった事故です。

墜落・転落による危害防止対策については、労働安全衛生法関連法規においても厳しく規制されていますが、コンサートやイベント等に用いられる足場やステージについては関連法規が遵守されないことがしばしばあり、同種の墜落死亡・重篤災害の発生が繰り返され、優秀な人材の生命が失われていることは誠に遺憾であります。

今回、このような悲惨な事故を二度と繰り返さないために、NPO法人 日本舞台技術安全協会は下記ガイドラインを定めます。会員各位におかれましてはあらためて事業場の安全対策を見直し、ガイドラインの徹底をお願いいたします。

ガイドライン

(1)   墜落により作業員に危害を及ぼす恐れのある箇所には、必ず安全な手すり囲い等を設けること。

(2) 墜落により作業員に危害を及ぼす恐れのある箇所には、必ず安全な手すり囲い等を設けること。  
    作業を行う箇所については安全な作業床の設置を行い、全面敷きまたは水平ネット等による防護措置をとり、
    作業床端部からの墜落危険性を除去すること。

(3)   ステージや足場については安全に昇り降りするための昇降設備を設けること。

(4)   高所作業においては必ず安全帯ハーネス等を着帯し、フックを所定の箇所に掛けること。また、フックを掛ける箇所を必ず設けること。


ガ イ ド ラ イ ン Vol. 6

『吊り物の落下防止のための安全対策』

平成18年6月1日

平成18428日、コンサートの準備作業中、スピーカーを吊っているナイロン・スリングが破断して総重量約1トンのスピーカーおよび吊り部材などが落下し、下で作業をしていた女性スタッフ1名が重傷を負いました。

NPO法人 日本舞台技術安全協会は今回の落下事故を極めて重大に受け止め、二度とこのような悲惨な事故が起きることのないように、現在行われている吊り作業の実態を調査し、実験を行い、遵守すべきガイドラインを策定しました。

会員の皆様におかれましては、このガイドラインを熟読し、必要な部材規格や技術資料を入手し、それぞれの安全範囲の中で作業することは言うまでもありませんが、更には各部材の弱点を充分に理解して、使用目的やその環境条件を常に把握して作業されることを強くお願いするものです。

会員各位、および当業界で同様の作業に携わる皆様には、本ガイドラインを充分にご理解していただいた上で、二度とこのような落下事故を起こさないという強い覚悟で作業にあたっていただけることを、深く念じております。

(1)コーナー保護(角張ったコーナーへの当て物)の使用

吊り元の部材のエッジ部の半径が小さいとスリング及びワイヤーが損傷を受けやすくなり、使用可能な荷重は定格荷重よりずっと小さくなる。*
吊り元には必ずコーナー保護材を使用すること。**(通常使用されているパンチカーペットは、養生材で保護材としては不向き)

* メーカー(日本)の技術資料によれば、ラウンドタイプのナイロン・スリングは、エッジ部の半径が5mm未満の場合、使用荷重は定格の30%以下となり、5mm以上10mm未満でも定格の70%以下となってしまう

** コーナー保護の例。

チョーク吊り           バスケット吊り                 角度のあるバスケット吊り

(2)三点吊りの推奨

重量物(スピーカー、LEDなど)の吊りの場合は2点吊りを極力避け、可能な限り3点吊りとすること。

(3)金属製ワイヤー、リンクチェーン、H鋼用ビームクランプ等の使用の推奨

重量物(スピーカー、LEDなど)の吊りの場合、あるいは火薬、花火などの特効が予定されている場合においては、吊り元にはスティールワイヤ−、ワイヤ−スリング、リンクチェーン、H鋼用ビームクランプ***などの金属製部材を使用すること。

やむを得ずナイロン・スリングを使用せざるを得ないような場合においては、必ずスティールワイヤなどでセーフティを施すこと。その場合は余長をできるだけ短くして、落下時の衝撃荷重を小さくしなければならない。

*** H鋼用ビームクランプはH鋼に保護材を使用せず直接取付けるため、H鋼の塗装が剥がれる。(H鋼強度問題無し)したがって使用にあたっては事前に会場施設側の許可を得る必要がある。必要に応じて本ガイドラインを提示し、理解を求めることが望ましい。


          ビームクランプの例

(4)吊り角度と負荷荷重

ワイヤー、スリング等の吊角度によって、部材にかかる負荷が変動する。この負荷荷重の変動を考慮せず吊り角度を設定すると、その角度によっては部材の破断もしくは損傷の原因となる。

一例として、W=1,000kg の場合を下に示す。

一般的に日本のメーカーが採用している部材の安全係数6を曲解して、2トン・スリングは12トンまで使えるという判断をする者がいるが、これは大間違い。当然のことながら、2トン・スリングは2トンまでしか使えない。吊角度により2トン以上の負荷がかかるような場合は、当然2トンより大きな耐加重の部材を使わなければならない。

(5)スリングの吊り方三種と荷重の関係

ラウンドタイプのナイロン・スリングの場合、表示されている定格荷重はストレート吊りに使用した場合のものである。チョーカー吊りをした場合の使用荷重はその80%に減じることを理解すること。

またバスケット吊りの場合の使用荷重は2倍となる。

ストレート吊り             チョーカー吊り                    バスケット吊り

(6)CMロードスターのインチング操作時の増加荷重

実験によると、CMロードスターのチェ−ンモーターの場合、昇降時にかかる過渡荷重(上昇スタート時、または下降ストップ時の瞬間最大荷重)は、静止荷重の1.4倍程度となる。(50HZの場合)

(7)吊り物のチェック体制の整備

催し物ごとに吊り物に関する責任者を事前に決めておき、その責任者は吊り作業中、および吊り作業終了後、吊り物が安全に行われているかどうかのチェックを行い、不備があった場合はただちに修正させることのできる権限を持たせること。

(8)機材昇降中の真下での作業禁止

吊り物が昇降中、その真下に入ることは自殺行為に等しい。メジャーによる高さ合わせなどの作業も、必要な高さ分のメジャーをあらかじめ引き出しておいて、床面にガムテープなどで固定する、あるいは所定の長さのフック付きヒモなどを利用した重り付きループなどを利用することで、吊り物の昇降中にその真下に入って作業をすることを避けることは可能である。

参考資料

 『台付けエワイヤー』と『玉掛けワイヤー』

台付けワイヤー

現場でよく使われている吊点ワイヤーシステムの名称を『台付け』と言っているが、正しくは『玉掛け』
台付けとは、文字通り荷揚げ用に台に取り付けるワイヤーを示す。

玉掛けワイヤー

吊点を作る為の、ワイヤーシステムを示す。

従って、専門取扱店に『台付けワイヤー』と注文すると、仕様の異なる発注となり、使用方法によっては十分な強度が得られず、事故につながることも考えられるので、充分注意すること。


ガ イ ド ラ イ ン Vol. 7

『照明機材のレンズ集光熱による事故の懸念』

平成22年9月1日

屋内、屋外を問わず、コンサートやイベント等において既設建物の梁や仮設の梁を用いてトラスや音響機材・照明機材・映像機材などを吊下げる為にナイロンスリングが多く使用されています。
その際、使用されるナイロンスリングが熱や火気によりナイロンが溶ける事が懸念されておりました。

その懸念されていたナイロンスリングが照明機材のレンズ集光熱により溶ける事故が発生してしまいました。幸いにも切断までには至らず、溶けたナイロンスリングが数トンの重量に耐え落下事故には至らなかったのです。
このような事故は重量物をステージ上や観客席の頭上にある機材が落下し重大事故になる恐れがあります。


今後、このような事故を二度と繰り返さないために、NPO法人 日本舞台技術安全協会は下記ガイドラインを定めます。会員各位におかれましてはあらためて事業場の安全対策を見直し、ガイドラインの徹底をお願いいたします。


(1) 使用する機材、機構の危険度を担当者及び担当会社が認識し、機材・機構の取扱いマニュアルを遵守する事。

(2) 使用する機材、機構の危険度は、取り扱い担当者及び担当会社が他セクションに発信の事



*我々の業種の現場は、多種多様の業者が混在し、一つの目的を目指して作業を行っています。機材、機構の認識を共有する事で、それに適した部材使用や、設営環境の改善を行う為にも、必ず全体打ち合わせの場で、説明が必要です。
 そして全体で具体的な安全対策を施し現場安全を確保致しましょう。 熱・炎・水・重量・強度・高所作業等、共通認識が必要なものが沢山あります。より密接な打ち合わせにより、安全現場を目指しましょう。

補足事項

 従来使用しているナイロンスリングからチェーン及びワイヤーの使用に移行することを推奨するものではありません、使用機材を適正に使用する事で安全現場を徹底しましょう。

 チェーン及びワイヤー等はオイルが附属として付いており、照明機材のレンズ集光熱に長時間さらされたり、特殊効果などで発生する熱にこれが燃焼しチェーン・ワイヤーを伝わり建物の躯体に燃え移る恐れや、
 漏電等で施設や人などへの危険性も考えられる為に一概にナイロンスリングよりも安全とは言えないのも現状です。
 

  

  事故により溶解したナイロンスリング。
  撤去時に判明した、溶けて冷えてを繰り返していた模様。
  このような状態になる経緯を実験で検証する。
  また、いろいろな素材も実験対象としてみました。


  * 実験場所は、室内スタジオ 室温 19℃ 空調状態 無風
    
使用した機材は大型の照明 7,000W 温度測定機器は放射温度計、熱伝対を使用。

   

  

平成25年6月28日